今はメルちゃんと散歩中や!もう、ホンマものごっつ可愛らしい。変な男から、わしが守ったるからなー?
・・・・・・そう思っとったんやけど、それやと、お友達もできひんさかい、メルちゃんは寂しいやろか?・・・・・・いや、そんな思いはさせへんよう、わしが目ェ一杯可愛がったらええっちゅう話やな!!
そやから、こうやって誰も近付かへんよう・・・・・・って、なんや、あの女?
ちょっと離れた所にでかい犬を連れた女がおって、こっちを見とる。わしが眼飛ばしたろうとした矢先に、先ににっこり笑いやがった。
・・・・・・な、なんや。ちょっと、可愛えとか思ってしまいそうになったやんけ・・・・・・。
って、こっちに来よる?!
「こんにちは。可愛い子ですね。お名前、聞いてもいいですか?」
「ああ?・・・・・・メルちゃんや。」
って、何答えてんねん、わしは・・・・・・。メルちゃんを褒められて、つい言うてしもたわ。
「メルちゃん?お名前も可愛いんですね。触っても・・・・・・。」
そう言いかけたとき、その女の犬が少し唸る。
「あ、ゴメンね、良介。本当、寂しがり屋なんだから。・・・・・・すみません、触らせてもらってもいいですか、って聞こうと思ったんですけど、うちの子が許してくれないみたいです。」
「・・・・・・そうみたいやな。」
「それでは、お散歩中お邪魔しました。」
そう言うと、女は去って行った。・・・・・・名前、聞いてへんかったな。
・・・・・・いやいや!名前なんか聞いて、どないすんねん?!!
なんや、どっか引っかかったまま、わしは次の日も同じ場所へ散歩に向かった。
・・・・・・別に、また会えたら、なんてことは思てへん。ただ、わしはいつも通りに向かっただけや。そやけど、その女は、またそこにおった。
「あ、こんにちは。またお会いしましたね。メルちゃんは元気ですか?」
「・・・・・・ああ。」
「ほら、良介。ちゃんと挨拶・・・・・・って、その前に。お名前、伺ってませんでしたね。私はと申します。」
「・・・・・・黒駒勝男や。」
「では、あらためて・・・・・・。良介、ちゃんと黒駒さんとメルちゃんに挨拶しないとダメよ?」
その犬は、わしを睨んだままで、何も動きよらへんかった。
そりゃ、こっちの反応の方が正解や。正直、わしの名前も結構有名やと思っとったんやけどなァ。この・・・・・・とかいう女には、わからんかったみたいや。
わしは溝鼠組の若頭。見た目だけでも、人はよう近付かんし、名前を聞いたら尚更や。・・・・・・この女以外はな。
「ごめんなさい。この子、人見知りが激しいみたいで。」
「それだけやないと思うけどな。」
「そうですか?」
「・・・・・・いや、何でもない。」
「?・・・・・・・でも、とにかく許していただいて、ありがとうございます。」
「当たり前やろ。犬相手に本気で切れてどないすんねん。」
「ふふ、お優しいですね。」
またもにっこりと笑う女。それに、今度はドキッとする。
・・・・・・って、なんでや?!そりゃ、多少は可愛えと思うけど!!わしが、こんな女なんかに・・・・・・!
そうや!最近、こういう顔は向けられてへんかったからな。ちょっと免疫が無くなりつつあったっちゅうか、慣れてへんかっただけや。
「べ、別に・・・・・・。」
「それでは、またお会いできることを楽しみにしていますね。」
そう言って、その女は去って行く。
・・・・・・アカン。ちょっと引き留めそうになってもうた。どうやら、わし・・・・・・この女に惹かれ始めとるんかも知れん。
複雑な心境の中、そやけど、メルちゃんの散歩をやめるわけにもいかず、翌日も同じコースを歩けば・・・・・・。
「あ、黒駒さん。こんにちは。」
「おう・・・・・・。」
「最近、こうして黒駒さんにお会いできるので、以前より散歩が楽しみになりました。」
・・・・・・アウトや。今のはアカン。せこいやろ。
今の一言と満面の笑みで、わしの心は、すっかりこの女に持って行かれた。いや、もちろん、七対三でメルちゃんに向いとるけどな!
「あ。兄貴ー!!」
そう思っとるはずやのに。そんな声に、わしは一瞬焦ってまう。
さすがに、こんな奴らに声かけられたら、わしも堅気やないとばれてまう。そうしたら、今までみたいに話せんようになる。そんなことを考えてしもた。
「あにき・・・・・・?」
「あ?兄貴、何なんですか、この女は。」
「別に何でもないわ。たまたま会うただけや。」
「そうですか。・・・・・・おい、兄貴に余計なことしやがったから許さねェからな。」
「ええから、お前ら、さっさと行け。」
「お、おす。それじゃ、失礼します。」
もうアカン。それでも、わしは・・・・・・。
「黒駒さんって・・・・・・、お兄さんのような存在なんですね。」
「・・・・・・は?」
「だって、『兄貴』って呼ばれてらっしゃったじゃないですか。皆さん、黒駒さんのことを慕っていらっしゃるんでしょうね。」
「いや、そういうわけやないけど・・・・・・。まあ、ええわ。」
・・・・・・なんや、天然か!!なんで、今ので気づかんねん!!
そうツッコミたい気持ちも山々やけど、内心、気づかれんかったことに、ごっつ安心しとるわしがおる。
はァ〜・・・・・・ホンマ、可愛すぎるわ、。
そんな風に思ってからは、毎日の散歩がこれまで以上に楽しみになってしもた。・・・・・・そういや、もそんなこと言うとったな、なんて思い出しただけでも、気分が良うなってまう。
・・・・・・これはマジやな。
そやけど、わしは極道者。堅気の彼女を幸せになんか・・・・・・って、なんや幸せて!!結婚する気か、わしは?!気、早すぎるやろ!・・・・・・いや、そういうことちゃうわ!
「もう良介ったらー。」
楽しそうな彼女の声が聞こえただけで、反応してまうわし。
声の聞こえた方を見ると、芝生に座り込んだに、犬の良介がじゃれついとった。
ホンマ、あの犬は飼い主に惚れ込んどんなァ。・・・・・・残念ながら、飼い主には、あまり伝わってへんようやけど。
今も良介は、に擦り寄ったり、尻尾を何度も振ったり、しまいにはの頬を舐めたり・・・・・・って。それはアカンのとちゃうか?!な、舐めるて!!
・・・・・・いやいや、落ち着け、わし。何を犬相手にムキになってんねや。
そう言い聞かせつつも、わしは少しずつその二人・・・・・・いや一人と一匹の元に向かっていた。
「あ、黒駒さん。」
「・・・・・・よう。」
はわしに気付き、良介にじゃれつきを中断するよう、手で制した。当然、に逆らうことはないけど、良介は中断された原因であるわしを思い切り睨みつける。
・・・・・・ええ根性しとんな?と睨み返しそうになって、そやから、犬相手に・・・・・・と同じ言葉を言い聞かせた。それで、立ち上がろうとしているに手を差し出す。
けど、その前に、なぜか良介が立ちはだかった。・・・・・・いや、なぜか、なんて理由がわからんわけがない。コイツは、わしとの間に入って、邪魔したいだけや。
そうか。そっちがその気なら・・・・・・と、これまで言い聞かせてた言葉を無視して、目に力が入りかけた瞬間。
「すごい・・・・・・!良介が私以外に近寄ろうとするなんて・・・・・・。良介、人見知りを克服してきたの?それとも、黒駒さんに慣れてきたのかな?どっちにしろ、偉い偉い。」
そう言いながら、は良介の頭を撫でとる。まだ座ったままのに、今良介の顔は見えとらんねやろうけど。コイツは、わしにもわかるぐらい、ごっつ複雑な表情をしとる。
そりゃ、そうやろうな。邪魔するつもりで立ったのに、わしに近づいたと思われて、しかもそれを褒められる・・・・・・。
それから、どうやら誤解は解けんかったみたいで、良介はわしに懐いた・・・・・・ふりをするようになった。
「本当、すっかり懐いて・・・・・・!黒駒さんもありがとうございます!」
「いや、別に・・・・・・。」
ただ、良介の本心に気づいとっても、こんなの嬉しそうな顔見せられたら、わしも合わせるしか無い。
とは言え。
「あ!アイスクリーム屋さん!私、ちょっと買って来てもいいですか?」
「え?あ、いや、・・・・・・。」
それぐらいわしが買うて来たる、と言いそうになって、そんなん柄やないと我に返る。
そうこうしてる内に、が立ち上がり、良介もついて行きかけた・・・・・・が。
「ごめんね、良介。良介は食べ物屋さんに近づいちゃダメなの。・・・・・・というわけで、少し見といていただけますか、黒駒さん?」
「・・・・・・ええで。」
「ありがとうございます!それじゃ、少し行ってきます。」
こないして二人――正確にはわし一人とメルちゃん、良介の二匹やけどな――になったら、途端にお互い敵意をむき出しにする。
おうおう、また眼飛ばしやがって・・・・・・。と思いつつ、こっちも睨み返したる。すると、良介が低い声で唸り始めた。
ホンマ、ええ度胸してんで。たとえ、犬とは言え、その根性だけは認めたる。そやけど、悪いが、を諦めることはできんからな。
そんなわしの心を読んだかのように、良介は一際大きく吠えた。・・・・・・と、そこへ。
「どうしたの、良介?」
飼い主のが帰って来た。
その声が聞こえた瞬間、良介は少しビクッとした後、恐る恐るを見る。
「ん?もしかして、アイス欲しい?残念だけど、これは黒駒さんの分。はい、どうぞ、黒駒さん。」
そう言って、は笑顔で俺にアイスを差し出す。・・・・・・いや、だから、わしはそないな柄やないんやけど。
そやけども!わかっとるけども!!こないな笑顔向けられて、断れるわけないやろ・・・・・・!
「・・・・・・おおきに。」
それに、アイスが嫌いっちゅうわけやない。しかも、わざわざがくれた物や。ありがたくいただこか。
と思っとったんやけど。
「良介。だから、アイスはあげられないの。」
なんでか、良介がの持つアイスに向かって飛び跳ねとる。・・・・・・アイスが欲しいんか?
そんな良介をかわそうと、がアイスを右へ左へ動かしてる拍子に。
「あ・・・・・・!」
が手を滑らし、アイスを落としてしもた。それを見て、良介はに謝るように項垂れる。
「もう・・・・・・。でも、良介の食べられない物を買ってきた私も悪いね。ゴメンね?」
・・・・・・ホンマ甘いな。そやけど、そんなとこものええとこやと、わしは思ってまう。
「ほら。これ、返すわ。はこれ食べたらええ。」
「えっ?で、でも、それは黒駒さんに差し上げた物で・・・・・・。」
「ええんや。わしはきっちり三借りたら七返す主義やからな。」
「・・・・・・ふふ。じゃあ、遠慮なく。ありがとうございます、黒駒さん。」
せっかくから貰った物を食べられんかったんは、正直ちょっと残念やったけど。またこうして笑顔が見られたんなら、それでええ。
・・・・・・はずやったんやけどな。
が美味そうに食べとるところを見た後、良介がわしの方もちらりと見た。そして、フッと鼻を鳴らす。
アイツ、まさか。わしに食べさせへんよう、わざと・・・・・・?!!
こうして、わしと良介の仁義なき戦いは、幕を切って落とされた。・・・・・・って、アホか!!
無茶したな、私!(滝汗)とりあえず、アニメで好きだな〜とか思ってたら。四天王篇で髪が乱れた瞬間、少しグラッときちまったんだゼ★(←)だって、あんなにサラサラヘアーだとは思わないじゃない!!(落ち着け)
というわけで、かなり時間はかかりましたが、頑張って書いてみました!相変わらず、需要があるかどうかは気にしません!(笑)
ただ、頑張ろうとはしたものの。黒駒さんの設定が設定だけに、どこまでの恋愛に持っていくか苦労しましたねー。それを解決するための、ワンワンだったのですが(笑)。
ちなみに、私の中でのワンワンのイメージはゴールデン・レトリバー。それで、ゴールデン=「最高の」→最高≒最良→良介、になりました(笑)。まぁ、皆さん、好きなワンワンをご想像ください♪
('12/08/16)